待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
「ひよりが壮一くんよりいい男と結婚するの! 社長の息子がNYから帰って来るの知ってるでしょ? 大学時代からずっとNYに住んでて、独身でしかもイケメン。副社長として来週から本社に着任するらしいし、そんな人と結婚でもすれば最高の復讐じゃん!」
私はそれを聞いて苦笑して、手を胸の前で横に振る。
「ないない。絶対ない。そもそもこんな話に出すなんて、副社長にも失礼よ。それに、復讐したいんじゃないってば」
私が「もう全部忘れる」と言うと、えー、と不満そうに和美が声を上げた。
息を吐き、私はビールジョッキをもって言う。
「だから、飲もう。付き合って」
「よし、とりあえず今日は飲もう! 忘れるなら飲むしかない!」
「うん」
私たちは、それから何度も乾杯をして、和美はそれからも壮一の悪口を延々と話していた。
でも私はそれをずっと聞いていても、壮一を悪く思うことはできなかった。