待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
「うぅ……飲みすぎた」
あれから、何杯飲んだかわからない。
そこから家が近い和美は徒歩で帰り、私は終電に間に合いそうだったので駅前まで歩いていた。
壮一と付き合いだして、お酒が美味しいって感じた。だから飲むたびに思い出してしまう。
なのに思い出すのは幸せな時間ばかりだ。
二人で色々な店をめぐって、飲んで食べて話して、私にはそれが幸せだった。
実家が飲食業を営んでいるからこそ、私は昔から食べることが好きなのだ。
壮一は食べ物にあうお酒をよく知っていて、それも魅力の一つだった。
酔って足元がおぼつかないのに、今日は誰もそれを支えてはくれない。
そうなると自分で立つしかなくなった私は、危ないながらも一人で歩くしかない。
前は壮一が困ったように笑って「大丈夫か?」って支えてくれたのに……。それを思い出すと悲しくなる。