待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
そう考えた所で、私の足元には、あるべきはずのものがない。
右足にはいていたはずのお気に入りのエナメルパンプスがなかったのだ。
足元をじっと見ていると、つかつかと人の気配が近づいてきて、恐る恐るその人を見上げる。
怒った紫色のオーラを放つ男の人。
左手で自身の頭を抑えて、右手には私のパンプスを持っている。
ダークブラウンの髪に、高そうなダークグレーのスーツ。180センチを超える身長はどこにいても目立ちそうだ。
一見細身そうなのに、スーツの上からでも筋肉質なのがわかる。切れ長の目に嵌っている黒い瞳は、人を殺せそうな勢いで私を睨んでいた。