待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
3章:引っ越し初日と一週間
それから週末の引っ越しまでは毎日柑士さんが迎えに来て、一緒に食事をしてアパートまで送ってくれるのが日常になってきていた。
少しだけ彼と一緒にいるのが慣れてきたころ、引っ越しの日となる。
引っ越しの荷物は業者が手早く運び入れて荷解きまでしてくれた。
「荷物はこれだけか?」
「はい、これだけです」
私は小さな頃、祖父の家に預けられて、それから祖父が亡くなって、父の家に、それからまたすぐに一人暮らし、と転々としていたせいか荷物はそんなに多くない。
私の部屋の片づけが終わったところで、彼は寝室に私を案内した。
広いダークブラウンの床の室内に、大きなキングサイズのベッドが置いてあった。
「寝室は同じでいいな」
そうはっきり言われて、私は言葉に詰まる。
「え……あの……」
言葉に詰まる私を見て、彼は突然、私の顎に手をかけた。
驚いて固まっていると、止める間もなく唇を重ねた。
「んっ……」
優しくて、甘いキス。
そう、それはまるで――。