待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 そう思って、婚約までしているのに全く覚悟もなかった自分に気づく。
 柑士さんは止める気もないように、すぐに首筋に熱い唇を埋めた。

「ひゃっ……」
「全部上書きしてやる」

(上書きって……)

 その言葉に、私は目を瞑って叫んでいた。

「な、ないんです!」
「……え」

 柑士さんの手が止まる。

「か、彼とは最後まで、してないんです。それどころか、これまで誰とも……。だから――」

 だから、やめろというつもりだろうか。
 自分で納得して婚約までしておいて。自分で自分の甘さが嫌になる。
 
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