待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 そう思ったとき、上にのしかかっていた柑士さんの重みがなくなった。
 ぎゅっと瞑っていた目をそっと開けると、柑士さんは困ったように笑ってこちらを見ていた。

 先ほど激しくキスされ、押し倒されたときとも違う雰囲気に思わずほっとする。
 そして、柑士さんは優しく私の髪を撫でた。

「すまない、怖がらせるようなことをした」
「いえ……。婚約したんだから、こんな覚悟をしておくのはあたり前ですよね」

 私が言うと、柑士さんは首を横に振る。

「違うんだ、ほっとしただけだ。焦ってすまない。ひよりが覚悟ができたと言うまでは我慢するから」

 柑士さんの優しい声が、私の胸の奥に届く。

(この優しい人を私は利用してしまっているんだろうか?)

 そう思うと、胸の奥がツキンと痛んだ。

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