待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 私が泣きそうになっていると、和美は微笑む。

「大丈夫よ。副社長、とんでもなく仕事もできるって有名だし、いつも冷静さを失わないところが評価されてんだし。どんなひよりでも全部大きな包容力で受け止めてくれるよ。はじめてをもらってもらうにはうってつけの相手だと思うわよ。ちゃっちゃともらってもらいなさい」
「ハハ……」

 私が渇いた笑いを出すと、和美は真剣な顔になって言う。

「そうでもしないとさ、あんたは壮一くんのことふっきれないでしょ。このままじゃ、あんたも幸せになれないし……副社長だってかわいそうだよ」

 そう言われて私は言葉に詰まる。

「それは、そうだよね」

(それはきっと、和美の言うとおりだ)

 私が頷くと、スマホが鳴った。
 表示を見ると、【柑士さん】と出ている。

 何かと思ったけど、電話で店の名前を聞きだされ、訳の分からないまま答えると、すぐ柑士さんが迎えに来てくれて和美も送ってくれたのだ。
< 44 / 83 >

この作品をシェア

pagetop