待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
作業に取り掛かっていたので、毒島課長の言葉が聞こえなくて顔をあげた。
すると、突然、柑士さんが顔を出した。
「ひより」
「副社長!」
毒島課長が声を上げる。
そんな課長を気にすることなく、柑士さんは言う。
「仕事終わったか?」
「あと少しです」
私が言うと、「じゃ、少し待ってる」と柑士さんは当たり前のように言い、空いているデスクに勝手に座る。
そこにいた毒島課長は、「わ、私はここで失礼します」と柑士さんに頭を下げて帰って行った。
私は思わず柑士さんを睨みつけそうになる。
だって、恥ずかしいし、みんな恐縮するから経理にはこないでって言ってるのに、柑士さんはあのお見合いの次の週からたびたびこうして経理に現れたから。