待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
 驚いて、突き放そうとするけど、全然できなかった。

 役員用エレベータは他のエレベータとは違いガラス張りではないが、いつどの階に止まってだれが乗ってくるともわからない。
 そんな場所で突然キスされて、その刺激に泣きそうになる。

 やっと唇が離れたとき、耳に唇を寄せて、柑士さんは囁く。

「途中で止まったら誰かに見られるかもな。せっかくなら見せようか」
「だめっ……!」

 もう一度キスをされそうになって顔を背ける。
 柑士さんは私の顎をもって自分の方を向かせた。

(もし誰かに見つかったら……!)

 少しその手が緩んだとき、慌てて逃げたら、ちょうどエレベータは一階に着いた。
 途中で止まらなかったことにほっと安心してエレベータを足早に降りる。

 柑士さんは私の手を引き、振り向いた私に微笑んだ。

「役員専用は途中では止まらない。見せられなくて残念だったな」
「~~~~~~~!」

 意地悪なその言葉に、もう声にならなくなっていた。
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