待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 私はその日、明け方に目が覚めてしまって、コーヒーを入れると柑士さんの部屋に持って行った。

「柑士さん? 少しいいですか?」

 部屋の外からそう言うと中から、あぁ、と返事がある。
 私が部屋を開けると、パソコンの前に柑士さんは座っていた。

 はじめて柑士さんの部屋に入ったけど、L字型のデスクに、大型のパソコンディスプレイ。
 それに大きな本棚と、必要最低限のものが揃って、本当に仕事部屋といった様相だった。

 柑士さんの表情もいつもより硬くて、仕事中のそれだと思った。

「コーヒー淹れたんですが、いかがですか?」
「あぁ、ありがとう」

 表情が緩んでそう言われて、思わず微笑んでしまう。

「すまない。起こしてしまったか?」
「いえ、ただお手洗いで目が覚めただけです」

 そうではないけど、そう言うと、ほっとしたように柑士さんは微笑む。
 邪魔しちゃいけない、と部屋を出ようとすると、腕を掴まれ、リクライニングの肘付きの大きな椅子に座ったままの柑士さんに抱き寄せられた。

「身体は大丈夫か? 昨夜も少し無理させた」

 そう耳元で問われて、急に昨夜のあれこれを思い出し、心臓がバクバクと鳴り出す。
 最近、抱き合ってるときだけでなく、柑士さんの近くにいると勝手に心臓が激しく脈打つようになっていた。
 
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