待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
それに気づかれないように、私は慌てて頷き、話を逸らす。
「あ、あの、はい。柑士さんはまた仕事してたんですか?」
「少しだけな。NYの仕事もあるから、この時間でないと連絡が取りづらくて。でももう終わった」
柑士さんは言いながら、私を抱き上げる。
椅子が二人分の重みで、ギシ、と鳴った。慌てて私は言葉を繋ぐ。
「あ、えっと……そういえば大学からずっとNYだったんですよね。NYってどんなだったんですか? 私、海外に行ったことないから憧れる」
「東京とそこまで変わらない」
「そうなんですね。食べものは?」
「あっちは量が多いな。味もやっぱり日本が一番だ。NYにはうまいオレンジブリオッシュもなかった」
「……え?」
私がその言葉に思わず顔を上げる。
「いや、何でもない」
柑士さんはそう言うと、そのまま私にキスをする。
そして、柑士さんの膝の上で向かい合わせに私を座らせると、またキスをした。