待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 肌を重ねたあとも、私が起きているときは、長らく溺れるようにキスが続く。

「んっ……」

 ちゅ、ちゅ、と軽いキスをされるといつの間にかそれに応えている。
 何度も交わすうちに、それが自分の唇にすっかり馴染んでいることに気づく。

(キスの回数も三桁を超えると唇に馴染むのかなぁ……)

「今日――」

 キスの合間、そう言いかけて、口を噤んだ。
 今日、壮一に社内で声をかけられた。

(だからいつもよりさらに今日は長かった?)

 そう聞いてみたかった。
 そうだと言われても、きっと嬉しいんだろうと思ったくらいだ。

 彼の大人げない言動に、少しずつ絆されている自分がいる。
 
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