待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

 実は今日、社内で壮一に声をかけられ、彼は『本当にいろいろとごめん。これまでの自分はいつも不誠実で……でも、椎野さんのことは本気で大事にしたいと思ったんだ』と言った。
 そんなこと言われてショックを受けるかと思ったけど、私は心からほっとした。

 大事な後輩と初めて好きになった人。二人がこれから幸せになってくれたらいいな、と心から思っていた。
 それから少しぎこちないが、壮一とはお互いに少しずつ、元の、私が好きになる前の同期に戻りつつあると感じていた。

 そんなことを考えていたとき、また、ちゅ、と唇にキスをされる。
 いつの間にか舌を絡めて、そっと彼の背中に腕を回す。

「早く心まで全部俺のものになれ」

 耳元で響く柑士さんの低い囁き。
 その声に、またぎゅっと心が掴まれた。
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