待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~

「母さんが亡くなって、父さん一人じゃ二人は育てられなくて。ひよりだけじいちゃんちに住んでただろ。でも、じいちゃんもベーカリーで忙しくてさ。あのベーカリーがひよりの居場所だったのに、それをなくすようなことをした。本当にすまなかった」

 それを聞いて思わず首を横に振る。

「違うよ。おじいちゃんと、父さんと兄さんも守ってくれてたから、これまで私は自分が好きなようにできてたんだって思ってる。本当にありがとう」

 それは事実だ。

「それに、今、私ちゃんと幸せだよ」

 私は今、これまでのどんな時間よりも幸せな日々を過ごしている。
 そう思って言うと、兄は白い歯を見せて笑った。

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