待てない柑士にひよりあり ~年上御曹司は大人げなくも独占欲が止められない~
その言葉に肩が震えて、思わず自分の頬を隠そうと手を出すと、その手を取られる。
目の前には、咎めるような目つきで私を見ている柑士さんがいた。
手を無理矢理に顔の横の壁に縫い付けられて、頬を隠すことは許されない。
「んっ……!」
戸惑っている間に全く想定していなかったタイミングで唇が重なる。
強く口づけられたあと、目を白黒させていると舌を差し込まれた。
「ふぁっ……」
キスの合間に漏れる吐息が室内を支配して、何も考えられなくなりそうで、怖くなって縋るように彼の背中をぎゅう、と掴んでいた。
それに気づいたのか、柑士さんは唇を離して、少し間をおいてから軽く何度か口づける。
優しくなったキスの感触にほっとしながら、ちゅ、ちゅ、と何度かキスをされると、ひざ裏に腕を差し込まれて、ひょいと持ち上げられた。
驚いて彼を見上げてみれば、彼はいつのまにか優しい笑顔で笑っていた。
「昨日の今日であまり無理させられないから、今日は少しだけ」
「少しとは⁉」
少しとか、少しじゃないとかあるのだろうか。
少なくとも私にとってはどれも大きな出来事だ。
訳が分からないままの私を抱き上げ、眉間にキスを落として、彼はまっすぐ寝室まで向かった。