初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます

わかっていたのに

「連日悪いわね。島津くん」
「いや、構わないよ。佐山と一緒にこのシステム面倒見てんの俺だから」

 金曜、定時を過ぎた居室内の打ち合わせコーナー、唯花の隣でパソコンを覗き込むのは島津というシステム管理部所属の同期の男性社員だ。
 彼は経理系のシステムを担当で、繁忙期を共に乗り越えた同士のような関係だ。

 細身で眼鏡をかけた彼は見た目ちょっとオタクっぽいところがあるが、実は明るく面倒見のいい男である。

「昨晩も連携出来てなかったのよ。島津君が修正してくれたのに」
「バッチ処理だから、不正なデータが紛れ込んでなければこんなことにならないんだけどなぁ」
 
 島津は黒い画面を覗き込みながら首を傾げている。

「今は手動で連携させてるけど、決算前には直したいのよ」

 最近、経費精算システムに度々不具合が発生するようになっていた。夜間に会社の基幹システムに自動データ連携されるプログラムがエラーになる現象が頻発しているのだ。

 唯花のチームで調査したが分からず、島津に協力を仰いだら快く引き受けてくれた。
 今、居室に人影は殆どない。

(今日も終電近くになっちゃうかも……折原君は明日の夜から台湾に出張だって言ってたな)
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