初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
　数日たっても彼女のことが頭を離れなかった。
　そこで初めて透は自分が初恋の沼に落ちていることを知った。

　名前も連絡先も聞いていなかったことを死ぬほど後悔した。
　何か手掛かりになる会話がなかったかと必死で記憶を辿ると思い出す話題があった。彼女の勤務先のことだ。

『獣医さんになりたかったけどお金も才能もなかったから。でも少しでも動物に関係する企業に勤めたくて、ペットフードのメーカーを選んだの。ほら、CMで流れてる”バウチュッチュ”っていうワンちゃんのおやつもウチの商品なのよ』

　その商品は『サクラダペット』という企業のもので、その親会社が『桜田フーズ』とだということを知った透は運命だと思った。母の恋人は桜田フーズの社長だったのだ。

　そこから透の人生は変わった。
『透に許してもらうまで結婚しない』という母と桜田社長に会い、結婚して欲しいと伝えた。
　自分の思惑もなかったとは言わないが、唯花に諭されたように身重の母を安心させるためでもあった。

　必死で勉強し、地頭の良さと努力の甲斐があり一流と呼ばれる大学に現役で合格することができた。
　大学卒業と共に桜田フーズに就職。３年間身を粉にして働いた後、義父に頼み込みサクラダペットに出向させてもらった。

（唯花さん、再会したのは偶然だって思ってる？）
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