初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
パフォーマンスとプロポーズ
また金曜日がやってきた。
昼過ぎ、唯花は例の打ち合わせコーナーで島津と並んで話していた。
「なんて、言ったらいいのかな」
「いいの……私も島津君みたいに立ち直るから」
先週のここでの一件で島津に透との関係がバレてしまった。口止めしたのだが、すぐに透が桜田社長の息子であること、そして専務の娘である愛奈と婚約したということが噂になった。
当事者の愛奈は周囲に聞かれる度に堂々と肯定していたから真実なのだろう。
今、彼女は上司に呼ばれて席を外している。唯花としても彼女とはあまり顔を合わせたくない心境だ。
(折原君のお母さんのお相手が桜田社長だったのね。偶然ってすごい)
透は桜田家に養子に入ったが、色眼鏡で見られたくなくて旧姓で通していたのだろう。
愛奈との婚約を機に公にする事にしたのではないだろうか。
一応恋人だった男に裏切られた形なのに、怒りは覚えない。
あったのは『やっぱりそうだよね』という諦めと切なさ。
年齢的にも立場的にも彼とは縁がなかったのだ。
透からはスマホに朝晩の挨拶や出張先での出来事、こちらの体調を気遣うメッセージが入っていたが、唯花は当たり障りのない返事しかしていなかった。
昼過ぎ、唯花は例の打ち合わせコーナーで島津と並んで話していた。
「なんて、言ったらいいのかな」
「いいの……私も島津君みたいに立ち直るから」
先週のここでの一件で島津に透との関係がバレてしまった。口止めしたのだが、すぐに透が桜田社長の息子であること、そして専務の娘である愛奈と婚約したということが噂になった。
当事者の愛奈は周囲に聞かれる度に堂々と肯定していたから真実なのだろう。
今、彼女は上司に呼ばれて席を外している。唯花としても彼女とはあまり顔を合わせたくない心境だ。
(折原君のお母さんのお相手が桜田社長だったのね。偶然ってすごい)
透は桜田家に養子に入ったが、色眼鏡で見られたくなくて旧姓で通していたのだろう。
愛奈との婚約を機に公にする事にしたのではないだろうか。
一応恋人だった男に裏切られた形なのに、怒りは覚えない。
あったのは『やっぱりそうだよね』という諦めと切なさ。
年齢的にも立場的にも彼とは縁がなかったのだ。
透からはスマホに朝晩の挨拶や出張先での出来事、こちらの体調を気遣うメッセージが入っていたが、唯花は当たり障りのない返事しかしていなかった。