初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
「なぜ役員フロアに……?」

 連れて来られたのは非常階段……ではなく、役員フロアの特別会議室の前だった。
 主に役員や賓客との大切な会議の時に使われ一般社員は利用できない場所だ。

「ごめん、時間をかけようと思ってたけどそうはいかなくなった。今から誤解を解くから」
 言うなり透は重厚なドアを開いた。
 広い室内には絵画が飾られ、会議テーブルや椅子などの調度品も重厚感のあるものが揃えられいている。

 透に続いて恐る恐る入室した唯花は中にいる面子に驚いた。
 愛奈と50代の男性がふたり、ひとりはサクラダペットの新見社長、愛奈の隣に緊張の面持で座っている男性は恐らく父親の奥村専務だ。

 さらに上座には一際オーラのある人物――桜田社長、桜田グループの最高経営責任者がいた。

(な、なんで桜田社長が……というか、こんなにお若い方だっけ)
 画像や映像で見たことはあるが実物の若さに驚く。男らしい精悍な顔をした桜田社長が唯花に声をかけた。

「佐山さん、急にお呼びだてして悪かったね。まあ座ってください」
「し、失礼します」
(え、なにこの状況、もしかして私今からここで息子を引っかけた性悪女だって糾弾されるの?)
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