初恋を拗らせたワンコ彼氏が執着してきます
 透との関係が公なった時、同僚たちは驚いたものの概ね祝福ムードだった。特に同期の島津は喜んでくれた。

 しかし、近いうちに唯花は今の職場を辞めることになるかもしれない。
 
 桜田社長から『経理経験を桜田フーズで生かしてみないか』と本社経理への移籍を打診されているのだ。
 
 身に余る話に最初は戸惑ったが、今まで真面目に頑張ってきた経験がより広いフィールドで生かされるならチャレンジしてみたいと思い始めている。
 
 透は唯花の望むようにしたらいいと応援してくれている。

『ただし、俺の奥さんであることは公言して。そうじゃない変な虫がたかるかもしれないから』と言われている。

 跡取り息子の妻と知られながら仕事をするのはやりにくいと思うのだが、どうなのだろう。

(まあいいか、透くんがそれで安心するなら)
 
 相変わらず透の麗しい容姿は目立ち、広いショールームでも人目を惹いている。

 しかし本人は周りを気にすることなく婚約者の手を引いて嬉しそうに店内を歩いていく。
 
 リビングボードやソファーなど様々な家具を見ていると唯花も新生活が楽しみになってくる。

「リラックスしたいからリビングの家具はモダンというより温かみのあるデザインにしよう。テーブルは大きめの方がいいな。将来子供ができた時にも便利だと思うし」
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