怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
そんなたわいもない会話をしている私たちの元へ、ひとりの女性が颯爽と歩いてくる。
上品な紺のスーツ姿で、髪を後ろでひとつにすっきりと結んでいるその人は、束縒の秘書の諸角 響子さんだ。
高学歴で頭の回転が速いらしく、仕事ではミスをしたことがないのだとか。
私とは同い年みたいだが、彼女のほうが顔が大人っぽいし、しっかりしていそうに見える。モデル並みにスタイルも良くて非の打ち所がない。
「社長、そろそろ出ませんとお時間が」
なにをこんなところで悠長に喋っているのかと言わんばかりに、私にも一瞬鋭い視線が飛んできた。
束縒の秘書さんだし、私とは直接関係ない人だから悪く言いたくはないのだけれど、彼女はけっこう気が強い。実はそこだけは苦手だと感じている。
たまに睨むような感じで見てくるので、彼女とはあまり目を合わせないように心掛けているくらいだ。
だからといって、それを束縒には言えない。
告げ口をしているみたいになる上、私にだけ愛想がないなんて考えすぎだと返されて終わりだろう。
おそらく、諸角さんは束縒をひとりの男として好きなのだと思う。
「俺、行かなきゃ」
束縒が諸角さんの言葉にうなずきつつ、上体を起こして椅子から立ち上がる。
「うちのレストランで会食予定だったのに、ほかの場所でと急な変更を申し出たのはこちらなのですから、遅れるわけにはいきません。前々から押さえていた個室をまさか譲ってしまわれるとは……」
「諸角!」
上品な紺のスーツ姿で、髪を後ろでひとつにすっきりと結んでいるその人は、束縒の秘書の諸角 響子さんだ。
高学歴で頭の回転が速いらしく、仕事ではミスをしたことがないのだとか。
私とは同い年みたいだが、彼女のほうが顔が大人っぽいし、しっかりしていそうに見える。モデル並みにスタイルも良くて非の打ち所がない。
「社長、そろそろ出ませんとお時間が」
なにをこんなところで悠長に喋っているのかと言わんばかりに、私にも一瞬鋭い視線が飛んできた。
束縒の秘書さんだし、私とは直接関係ない人だから悪く言いたくはないのだけれど、彼女はけっこう気が強い。実はそこだけは苦手だと感じている。
たまに睨むような感じで見てくるので、彼女とはあまり目を合わせないように心掛けているくらいだ。
だからといって、それを束縒には言えない。
告げ口をしているみたいになる上、私にだけ愛想がないなんて考えすぎだと返されて終わりだろう。
おそらく、諸角さんは束縒をひとりの男として好きなのだと思う。
「俺、行かなきゃ」
束縒が諸角さんの言葉にうなずきつつ、上体を起こして椅子から立ち上がる。
「うちのレストランで会食予定だったのに、ほかの場所でと急な変更を申し出たのはこちらなのですから、遅れるわけにはいきません。前々から押さえていた個室をまさか譲ってしまわれるとは……」
「諸角!」