怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
余計なことを言うなとばかりに束縒が彼女の言葉を途中でさえぎった。
諸角さんはまだ納得がいかないようだったが、キュッと下唇を噛んだあと「失礼致しました」とこちらに頭を下げる。
一瞬私を見た彼女の瞳に怒りの炎が灯っていた。
先ほど漏らした言葉から察すると、束縒は無理をして私の頼みを聞いてくれたみたいで、諸角さんはそれについて怒っているようだ。
束縒はそんな事情はなにも言っていなかった。
仕事での会食の場を変更してまで私に個室を譲ってくれたと今初めて知り、私はおろおろと動揺してしまう。
「えっと……ごめん。私のせいだよね」
「俺が勝手にそうしたんだから気にするな。じゃあ、またな」
「うん、ありがとう」
束縒が軽く片手を上げ、颯爽と出口へ向かって歩いていく。
その後ろを小走りで諸角さんが追いかける格好だ。今の言動で彼女が叱られなければいいけれど……。
涼しい部屋にいながらゆったりとした気持ちで意中の人を待つ、そんな時間もいいなと考えていたら、テーブルに置いていたスマホが着信を告げた。
憲一朗さんからだろうかと画面を確認したら、電話をしてきたのは桃田グループの顧問弁護士である安西さんだった。
デート前に仕事の話はしたくないなと思いつつ、無視もできないので通話ボタンをタップした。
スマホを耳に当てると、「もしもし」と男性特有の低い声が耳に届く。
諸角さんはまだ納得がいかないようだったが、キュッと下唇を噛んだあと「失礼致しました」とこちらに頭を下げる。
一瞬私を見た彼女の瞳に怒りの炎が灯っていた。
先ほど漏らした言葉から察すると、束縒は無理をして私の頼みを聞いてくれたみたいで、諸角さんはそれについて怒っているようだ。
束縒はそんな事情はなにも言っていなかった。
仕事での会食の場を変更してまで私に個室を譲ってくれたと今初めて知り、私はおろおろと動揺してしまう。
「えっと……ごめん。私のせいだよね」
「俺が勝手にそうしたんだから気にするな。じゃあ、またな」
「うん、ありがとう」
束縒が軽く片手を上げ、颯爽と出口へ向かって歩いていく。
その後ろを小走りで諸角さんが追いかける格好だ。今の言動で彼女が叱られなければいいけれど……。
涼しい部屋にいながらゆったりとした気持ちで意中の人を待つ、そんな時間もいいなと考えていたら、テーブルに置いていたスマホが着信を告げた。
憲一朗さんからだろうかと画面を確認したら、電話をしてきたのは桃田グループの顧問弁護士である安西さんだった。
デート前に仕事の話はしたくないなと思いつつ、無視もできないので通話ボタンをタップした。
スマホを耳に当てると、「もしもし」と男性特有の低い声が耳に届く。