怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 沢田さんは父の秘書を八年務めている女性だ。
 私に予定を言わないのはいつものことだけれど、沢田さんにはなにもかもすべて報告しているはずなので、どこに居るか彼女ですら知らないのは珍しい。
 というか、連絡がつかないって……父はコソコソとなにをしているんだか。


「メールも送ってるんですが、ずっと既読がつかない状態なんですよ」

「ご迷惑をおかけしてすみません。私からも父に連絡をしてみます」

「よろしくお願いします」


 電話を切ったあとすぐに、安西さんに連絡するように父に短くメールを送る。

 父には自分が体たらくなことにそろそろ気づいてほしい。そのせいでいろんな人に迷惑をかけているのだから。
 憤慨したところで、仕事で父のサポートを請け負っているのは主に秘書の沢田さんで、私ではないのだけれど。

 しばらく画面を見つめるものの、私の送ったメールにもやはり既読がつかない。
 電話もどうせ繋がらないだろうと思いつつかけてみたが、案の定電源が入っていないという機械的な音声が流れた。
 とりあえず留守電にもメッセージを入れておこう。今はそうするしかない。
  
 こんなことが頻発しているかどうかまでは知らないけれど、もしそうなら、父にGPSでもつけさせればいいのだ。
 それならどこにいるのか一発でわかるのに。

 デート前に気持ちをどんよりさせないでもらいたい。
 と、スマホをテーブルに置いてひとりでうなだれた。

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