怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「私、なにも知らないままずっと待っていたのに……」
『会見の準備でバタバタしていて連絡できなかった。とにかく、俺は結婚するから。君とはもうふたりでは会えない。今までありがとう。元気でね』
「ちょっと待って!」
一方的に言うだけ言って、私が声を発するのと同じタイミングで彼は電話を切った。
私のことをかわいいと照れながら褒めてくれたこともあった。その彼はどこに行ってしまったのだろう。
互いにはっきりと好きだとは口にしなかったけれど、恋人にステップアップする前の楽しい期間だと思っていたのに。
私の胸の中は悲しみでいっぱいで、傷だらけだ。
『とにかくアイツはクソ野郎だってことだ』
昨日の束縒の言葉が脳内でリフレインする。
私にここまで気を持たせたのだから、束縒の言うとおりだ。
「冬璃さん……」
テーブルに肘をついて頭を抱えていると、背中のほうから声がした。
それに気づいて振り向けば、濡れたタオルを手にした久米さんが今にも泣きそうな顔で立っていた。
「洗いざらい世間に公表してはどうですか?」
「……え?」
「週刊誌の記者に話すとか。あ、今はSNSの時代ですよね。いろいろと暴露しては? だって“二股”ですよね?」
『会見の準備でバタバタしていて連絡できなかった。とにかく、俺は結婚するから。君とはもうふたりでは会えない。今までありがとう。元気でね』
「ちょっと待って!」
一方的に言うだけ言って、私が声を発するのと同じタイミングで彼は電話を切った。
私のことをかわいいと照れながら褒めてくれたこともあった。その彼はどこに行ってしまったのだろう。
互いにはっきりと好きだとは口にしなかったけれど、恋人にステップアップする前の楽しい期間だと思っていたのに。
私の胸の中は悲しみでいっぱいで、傷だらけだ。
『とにかくアイツはクソ野郎だってことだ』
昨日の束縒の言葉が脳内でリフレインする。
私にここまで気を持たせたのだから、束縒の言うとおりだ。
「冬璃さん……」
テーブルに肘をついて頭を抱えていると、背中のほうから声がした。
それに気づいて振り向けば、濡れたタオルを手にした久米さんが今にも泣きそうな顔で立っていた。
「洗いざらい世間に公表してはどうですか?」
「……え?」
「週刊誌の記者に話すとか。あ、今はSNSの時代ですよね。いろいろと暴露しては? だって“二股”ですよね?」