怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
久米さんが作ってくれたおにぎりを食べ、自室で着替えて出勤準備をする。
不意に憲一朗さんからもらった時計が目に入り、それをそっと引き出しの奥にしまった。
誕生日にこれを贈られたときは幸せだったな。
もう身に着けることはないだろう。処分するかどうか考えないといけないが、今はそんな気分ではないので先送りだ。
髪を梳かし、メイクを施してから会社へ向かう。
雨なので気分も乗らないし、寝ていないので体もだるい。
会社に着いてすぐ、社長室の扉をノックして入室してきたのは、財務担当のCFOとして働いてくれている九住 万喜さんだった。
彼女は父のもとでずっと働いてくれていた優秀な人なのだけれど、㈱マグノリアの立ち上げのときに私がお願いしてこちらに移ってもらった。
私がCEOとして不甲斐なくても、ひと回り年上の彼女が参謀としてそばにいてくれるので、なんとかやってこれている。
「お疲れ様です。社長、体調はいかがですか?」
「大丈夫です。すみません、ご心配をおかけしました」
「実はご報告しなければいけないことがありまして……」
真剣な表情で眉根を寄せる彼女を見て、良い話ではないのだと想像がついた。
「なにかありました?」
「㈱グローイングの沢田さんから連絡があったんですが、佳洋社長とまだ連絡が取れないらしいんです」
「あぁ……私にも昨夜、弁護士の安西さんから電話が来ましたよ。私からも父に連絡してるんですが、なしのつぶてです」
不意に憲一朗さんからもらった時計が目に入り、それをそっと引き出しの奥にしまった。
誕生日にこれを贈られたときは幸せだったな。
もう身に着けることはないだろう。処分するかどうか考えないといけないが、今はそんな気分ではないので先送りだ。
髪を梳かし、メイクを施してから会社へ向かう。
雨なので気分も乗らないし、寝ていないので体もだるい。
会社に着いてすぐ、社長室の扉をノックして入室してきたのは、財務担当のCFOとして働いてくれている九住 万喜さんだった。
彼女は父のもとでずっと働いてくれていた優秀な人なのだけれど、㈱マグノリアの立ち上げのときに私がお願いしてこちらに移ってもらった。
私がCEOとして不甲斐なくても、ひと回り年上の彼女が参謀としてそばにいてくれるので、なんとかやってこれている。
「お疲れ様です。社長、体調はいかがですか?」
「大丈夫です。すみません、ご心配をおかけしました」
「実はご報告しなければいけないことがありまして……」
真剣な表情で眉根を寄せる彼女を見て、良い話ではないのだと想像がついた。
「なにかありました?」
「㈱グローイングの沢田さんから連絡があったんですが、佳洋社長とまだ連絡が取れないらしいんです」
「あぁ……私にも昨夜、弁護士の安西さんから電話が来ましたよ。私からも父に連絡してるんですが、なしのつぶてです」