怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「束縒くん、うちの娘と交際して本当にいいの? 君は女性からモテるだろう?」

「僕はずっと前から冬璃さんが好きだったので。彼女しか目に入らないんです。ベタ惚れですよ」


 しっかりとした口調でそんなふうに言われると、ウソだとわかっていてもドキドキして顔が赤くなってくる。
 しかし束縒がこんなにも芝居がうまいとは。整った顔をしているし、俳優になれたのではないだろうか。


安達(あだち)建設の令嬢と見合いをさせようとしても頑なに断ったのは、冬璃さんと交際していたからだったんだな」


 束縒は葛城会長の言葉を聞き、目線を下げつつうなずいた。
 もちろん私は口を挟むことはできず、話の行方を静かに見守るしかできない。


「で、さっきの話の続きだが」


 会長が声音を低くし、束縒に向かって語気を強めながら話しかける。
 なんだか場の空気が変わった気がして、すぐさま私の肌が粟立った。


「縁起のいい日に結納と入籍を済ませるといい。母さんも交えて冬璃さんにはうちで打ち合わせをしてもらって……」

「会長、待ってください! 彼女にはまだ正式にプロポーズしてないんです」

「おお、そうだったか。それを先に言えよ。フライングしてしまったじゃないか」


 就職してからの束縒は、父である会長に対して会社では徹底して敬語を使っている。
 ビジネスの場として一線を引いているようだ。

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