怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
会えばいつも穏やかな笑みを浮かべていた工藤さんの顔が頭に浮かんだ。
詳細を聞いた今、あんなに善良そうな人が綿密に計画して横領をしたことにショックを隠せない。
だけど束縒の言うとおり。それはいったん置いておいて、今は全力で会社を守らなくては。
小さくウンウンと相槌を打ちつつ、束縒からの言葉を待った。
「佳洋さんは資金調達のために方々を回ってみたけどダメで、うちが最後の砦だと言ってた」
なんとかする、なんて父は言っていたのに、崖っぷちに立たされているではないか。
葛城会長が助けてくれそうだからよかったものの、もう少しで倒産するところだった。
「実はうちの親父も最初は渋ったんだ。旧友とはいえ親戚でもないわけだし、そんなに簡単に出せる額じゃないって。そこでつい……俺と冬璃は付き合ってて結婚を考えてるから、将来は姻戚関係になるってウソをついた。親父からの融資を取り付けるために」
「そう……だったの」
「悪い。何ヶ月か経ったら、別れたって報告すればいいって考えだった」
私は束縒を責められない。彼は私の父を助けようとしてくれたのだから。
その助け船がなかったら融資の話は流れていた可能性が高い。彼を責めるどころか感謝しなくてはいけないだろう。
詳細を聞いた今、あんなに善良そうな人が綿密に計画して横領をしたことにショックを隠せない。
だけど束縒の言うとおり。それはいったん置いておいて、今は全力で会社を守らなくては。
小さくウンウンと相槌を打ちつつ、束縒からの言葉を待った。
「佳洋さんは資金調達のために方々を回ってみたけどダメで、うちが最後の砦だと言ってた」
なんとかする、なんて父は言っていたのに、崖っぷちに立たされているではないか。
葛城会長が助けてくれそうだからよかったものの、もう少しで倒産するところだった。
「実はうちの親父も最初は渋ったんだ。旧友とはいえ親戚でもないわけだし、そんなに簡単に出せる額じゃないって。そこでつい……俺と冬璃は付き合ってて結婚を考えてるから、将来は姻戚関係になるってウソをついた。親父からの融資を取り付けるために」
「そう……だったの」
「悪い。何ヶ月か経ったら、別れたって報告すればいいって考えだった」
私は束縒を責められない。彼は私の父を助けようとしてくれたのだから。
その助け船がなかったら融資の話は流れていた可能性が高い。彼を責めるどころか感謝しなくてはいけないだろう。