怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
彼女にウソをつくのは心苦しいけれど、私と束縒が策をめぐらせて結婚した経緯は決して誰にも話さないとふたりで取り決めをした。
だから本当のことを言いたくても、それは出来ない。
「私は冬璃さんが幸せならそれでいいのです。でも、全然笑顔じゃないのが気になっていて……」
愛想笑いをしているつもりだったが、付き合いが長いのもあって、彼女は私の表情を必要以上に読み取ってしまう。
心から笑っていないと見抜かれたみたいだ。
「大丈夫。私は幸せよ。新婚だもの!」
久米さんには堂々とそう言ってのけたものの、本当は不安でいっぱいだった。
私はこの先どうなるのだろう、と。
束縒の提案に従って偽装結婚に踏み切ったが、私も彼も、まだ落としどころを見つけられてはいない。
束縒のためにも、この歪んだ婚姻関係はいずれ解消しなければいけないだろう。
会社のことも絡んでいるためタイミングが難しいが、必ずその日は来ると思っている。
久米さんにはいつかすべて話したい。彼女の複雑な表情を見ていたら心が痛んだ。