怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 ひと通りの片付けが終わり、冷蔵庫の中身やキッチンにある調味料などを事前に確認したあと、ふたりでスーパーに買い出しに行った。
 夕食まで作らなくても大丈夫だと伝えたのだけれど、私がここに引っ越してきて初めてふたりで過ごす夜なので、なにか洒落た料理を準備したいのだと久米さんに強く言われた。
 そんな彼女の心遣いは素直にうれしいし、ありがたい。

 私も作るのを手伝ったが、久米さんの手際の良さに圧倒されるばかりだった。さすがとしか言いようがない。

 あっという間に野菜を切り、ぐつぐつと鍋で似ていたのはラタトゥイユ。
 同時にエビとブロッコリーを使ってアヒージョを作ってくれた。バゲットを添えれば、オシャレな夕飯の出来あがりだ。


「ワインとグラスはこちらに準備してありますので。食事のときにおふたりでどうぞ」

「久米さん、本当にありがとう」


 すべてやり終えた彼女を玄関先まで見送ると、笑顔で会釈をして帰っていった。

 キッチンに戻って料理に合う食器を選ぶ。
 ひとり暮らしの男性の家だから、最低限のものしかないのだろうと思っていたが、意外と大小さまざまな食器が揃っていた。
 真新しいので、最近買っておいてくれたのかもしれない。


 ダイニングで束縒を待ったいたものの、なかなか帰宅しなかったので、私はテーブルに突っ伏してウトウトしてしまった。
 ガチャリ、と玄関扉の開く音が聞こえて目を覚ます。


「おかえり」

「……ただいま」

「遅かったね」

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