怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 壁にかかった時計を見ると、時刻は二十二時になろうとしていた。
 束縒は私と視線を合わせ、ふっと表情を緩める。


「お腹すいたでしょ? ご飯あるよ。って言っても、今日は久米さんが作ってくれたんだけど」

「……そっか。着替えてくる」


 なんとなく態度がおかしいと感じながらも、私はあわてて料理を温め直し、トースターでふたり分のバゲットを焼く。
 テーブルに並べ終わるころに、部屋着に着替えた束縒がダイニングに現れた。


「ワイン飲む?」

「いや、仕事が残ってるからいい」


 久米さんがせっかく用意してくれたけれど、このあとまだ仕事をするなら飲めないだろう。
 仕方がない。ワインは逃げないので、別の機会にいただくとしよう。


「ラタトゥイユ、うまいな」


 束縒はひとくち食べるなりおいしいと褒めた。
 久米さんは本当に料理が上手だ。
 和食でも洋食でも、なんでも作れるし、味も最高においしい。

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