怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「明日からは私が作るから、悪いけど味は保証しないよ。こんなにオシャレな料理も無理だし」

「その件だけど……」


 フフッと笑った私に対し、向かいに座る束縒が真剣な眼差しを寄こした。
 なにかまずいことでも口走っただろうか。


「俺を待たなくていいし、食事の準備もしなくていい。冬璃も仕事で忙しいから家事をやってる暇はないだろ? 自分のことは自分でやろう」

「え……でも……」


 私はなにも言い返せなかった。
 間違っているのは私だ、勘違いするな、と釘をさされた気がしたから。

 同居することになったとはいえ、私たちは仕方なく籍を入れただけの夫婦なのだ。
 まさしく“紙切れ一枚”の関係。
 それなのに、普通の新妻のような振る舞いはおかしいだろう、と。


「ごちそうさま。久米さんに礼を言っておいて」


 料理を黙々と完食した束縒は、立ち上がって食器をシンクへ運んだ。
 それを見た私は、手にしていたスプーンを置き、あわてて彼のあとを追う。


「私が洗うから大丈夫」

「自分のことは自分でって、言ったばかりだろ」

「いいの! 束縒は今からまだ仕事をするんでしょ? 今日だけは私がやる」

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