怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 でも、久米さんが見ていたのもあって、使っていた布団は実家から持ってこられなかった。
 あとで予備の布団がないか束縒に聞いてみよう。
 夏だから薄いブランケットみたいなものがあればリビングのソファーでも寝られる。
 
 切り替えよう。これは新婚生活ではなく、ただの共同生活なのだから。
 彼の妻になるのは表向きだけだ。


 食べ終えた私はキッチンを片付け、シャワーを浴びた。
 すっかり寝る準備が整ったところで、束縒の部屋の扉をノックする。


「ごめん、まだ仕事中?」


 扉のすき間から顔を覗かせて声をかけると、パソコンデスクで作業をしていた束縒が振り返った。


「どうした?」

「あの……私、自分の布団がないの。余ってる布団ってある? なければソファーで寝るけど……」

「普通に寝室のベッドを使えよ。キングサイズなんだから十分広いだろ」


 平然とそう言われても。
 どういう意味に捉えていいのかわからない。先ほども線を引こうとしたのは束縒のほうなのに。

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