怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 出勤すると、すでに会社には九住さんの姿があった。


「おはようございます。新居に引っ越された翌日なのに、お早い出勤ですね」

「九住さんこそ。昨日は休ませてもらってすみませんでした」


 私の結婚は会社のスタッフにも社内メールで伝えてある。
 入籍は済ませたが、式や披露宴、新婚旅行は来年の予定にしていることも。


「あらためて、ご結婚おめでとうございます。以前から好きな男性がいらっしゃるのかなと思っていましたが、サンセリテホテルの葛城社長だったとは。電撃結婚ですね」

「ああ……あはは」


 九住さんにも本当のことは話せていない。
 そして、彼女が口にしたのは憲一朗さんに恋をしていたときの私の様子だ。
 今は訂正したくてもできないけれど。

 愛想笑いの笑みをたたえていると、バッグの中でスマホの着信音が短く鳴る。
 画面を見ると、束縒からメールが送られてきたようだ。


『おはよう。布団は買わなくていいからな』


 その文面を目にし、小さく溜め息を吐いた。
 昨夜みたいにベッドを使え、という意味なのだろう。

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