怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
§4.ブレない気持ち
***
俺が冬璃と初めて会ったのは十歳のときだったが、えらくおとなしい女の子だなというのが第一印象だった。
だけど、子ども心ながら俺は冬璃に淡い恋心を抱いていた。
中学や高校時代はたいした繋がりもなく、たまにしか会わないので、俺の中では単なる“父親の友人の娘”という位置づけに変わっていった。
だが二年前、彼女が㈱マグノリアのCEOに就任してから俺たちは急激に接点が増えて、ガキのころに好きだった気持ちが一瞬にしてよみがえった。
今はひとりの女として冬璃が好きだ。
「どうしてですか? 先方もうちの新しいレストランで食事ができると楽しみにしていらっしゃたのに!!」
取引先との会食の場所を変更し、それを先方に伝えるようにと指示を出した途端、秘書の諸角が眉根を寄せて俺を追及してきた。
しっかりしているのが彼女の取り柄だが、妙なところでも勘がはたらく。
リザーブしていたレストランの個室を冬璃に譲ったからだと正直に話せば、諸角はあからさまに怒りの表情を見せた。
本人はおもてに出さずに我慢しているつもりのようだけれど、顔は真っ赤だし、思いきり態度に出ている。
「あちらはデート、こちらは仕事ですよね?! 私には理解できません!!」
秘書にこんなにもガミガミ言われている社長は珍しいのだろうな。
だけど彼女はいつも正しい。今回だって、悪いのは俺だから「すまない」としか言いようがない。
でも、滅多に頼みごとをしない冬璃が直接俺に頼んできたんだ。聞いてやらないわけにもいかない。
新しくできたレストランは毎日満席で、特に個室は予約が取れない状況だということに、冬璃は気づいていなかったのだろう。
わかっていたら絶対に気安く頼んでなどこないはずだ。
食事をする相手は、野島 憲一朗。
俺は行きたくもない会食で、その男は冬璃とデートかと考えたら、次第に腹が立ってくる。正直、交代してもらいたい。
冬璃を好きなのに、ほかの男とのデートをアシストするなんて、俺は本当にアホだな。
俺が冬璃と初めて会ったのは十歳のときだったが、えらくおとなしい女の子だなというのが第一印象だった。
だけど、子ども心ながら俺は冬璃に淡い恋心を抱いていた。
中学や高校時代はたいした繋がりもなく、たまにしか会わないので、俺の中では単なる“父親の友人の娘”という位置づけに変わっていった。
だが二年前、彼女が㈱マグノリアのCEOに就任してから俺たちは急激に接点が増えて、ガキのころに好きだった気持ちが一瞬にしてよみがえった。
今はひとりの女として冬璃が好きだ。
「どうしてですか? 先方もうちの新しいレストランで食事ができると楽しみにしていらっしゃたのに!!」
取引先との会食の場所を変更し、それを先方に伝えるようにと指示を出した途端、秘書の諸角が眉根を寄せて俺を追及してきた。
しっかりしているのが彼女の取り柄だが、妙なところでも勘がはたらく。
リザーブしていたレストランの個室を冬璃に譲ったからだと正直に話せば、諸角はあからさまに怒りの表情を見せた。
本人はおもてに出さずに我慢しているつもりのようだけれど、顔は真っ赤だし、思いきり態度に出ている。
「あちらはデート、こちらは仕事ですよね?! 私には理解できません!!」
秘書にこんなにもガミガミ言われている社長は珍しいのだろうな。
だけど彼女はいつも正しい。今回だって、悪いのは俺だから「すまない」としか言いようがない。
でも、滅多に頼みごとをしない冬璃が直接俺に頼んできたんだ。聞いてやらないわけにもいかない。
新しくできたレストランは毎日満席で、特に個室は予約が取れない状況だということに、冬璃は気づいていなかったのだろう。
わかっていたら絶対に気安く頼んでなどこないはずだ。
食事をする相手は、野島 憲一朗。
俺は行きたくもない会食で、その男は冬璃とデートかと考えたら、次第に腹が立ってくる。正直、交代してもらいたい。
冬璃を好きなのに、ほかの男とのデートをアシストするなんて、俺は本当にアホだな。