怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 それから何日も経たないうちに、冬璃にさらなる災難が降りかかった。
 まさに泣きっ面に蜂。
 佳洋さんの会社で横領事件が起こったそうだ。
 支払い期日が迫っているから助けてほしいと、佳洋さんがうちの父に土下座をして急な融資を頼んできた。

 俺は援護射撃をしたくて、冬璃とは恋人同士なのだと思わずウソを口にしてしまう。
 佳洋さんのそばに立ち、俺も一緒になって父に頭を下げる。
 彼女と結婚を考えているとまで言えば、父も安易に見捨てられないだろう。

 俺が加勢する理由はただひとつ。彼女が大事にしている会社を守りたかったのだ。
 

「今日は、冬璃さんは?」


 土下座を解除してソファーに座り直した佳洋さんに、父がなにげなく尋ねた。


「娘にはまだ、葛城さんに融資をお願いすることを話していないんです」


 急におろおろとする佳洋さんを目にし、相変わらずだなと少々あきれた。
 プライドが高いのか、ただの秘密主義なのか。
 はっきりとした理由はわからないが、娘の冬璃とはあまり会話がないようだ。自分の都合の悪い事柄については特に。
 俺のところも変な親子関係だから、人のことはとやかく言えないのだけれど。


「彼女を呼びますね」

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