怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 入籍して二ヶ月が経ったころ、兄の伶司が突然家を訪問してきた。
 この男はいつもこうだ。サプライズ好きだから、予告なしで突飛な行動をする。

 兄貴は人を和ませる才能を持っている。
 ソフトで人当たりがいいので、いるだけで場の空気が明るくなるのだ。
 俺にはない才能だから、実は少しだけうらやましく思っている。

 そういう性格のほうが絶対に人に好かれる。
 冬璃も子どものころは兄貴が好きで、よくまとわりついていた。

 どうせ偽装結婚するなら俺より兄貴のほうが良かったのだろうと、そんな考えがふと浮かんでくる。
 ネガティブなのは俺らしくないのに。

 俺は決して兄貴を嫌ってはいない。
 ただ、冬璃のことになると嫉妬心が先行するのだ。
 ふたりが楽しそうに話しているだけで、なぜだか無性にムカついた。


「あらためて、結婚おめでとう」


 兄貴に祝福されて、微妙な笑みをたたえる。
 会社を盾に入籍させられた冬璃が、途端にかわいそうに思えてきた。

 だけど俺は、ハナからこの結婚を解消する気はない。

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