怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】

「㈱マグノリアのことですが……」

「ん？　なんだ？」

「率直に言います。手は出さないでください」


　真剣な眼差しを向ける俺に対し、父は口元を緩めてニヤリと笑った。
　図星を指されたとでも言いたげだ。


「人聞きの悪いことを言うなよ。俺が冬璃さんから会社を取り上げるとでも？」

「違うんですか？」


　ダメだ。感情的になって詰め寄りすぎた。
　冷静にならなければ父に隙をつかれてしまうと自分に言い聞かせる。


「ひょっとしたら親を騙して偽装結婚でもしたのかと思っていたが、お前は本当に冬璃さんに惚れてるんだな」

「そうです」

「ま、心配するな。その代わり、お前には俺の後継者としてきっちり働いてもらおう」


　父の言葉を聞いて内心ホッとした。なにかを無理強いされるのは俺だけで済むようだ。
　それで冬璃を守ってやれるのだとしたら、なんてことはない。