怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「な、なんか束縒、近くない?」


 ずっと張り付くようにそばにいる俺を意識してか、冬璃の頬が紅潮している。
 俺の感覚では、近くはない。抱きしめたいのを我慢しているくらいだ。


「喉渇いたな。なにか飲み物持ってくる」


 プールから上がると、即刻冬璃の肩にパーカーを掛けて胸元をガードする。
 飲み物はなにか南国らしいものがいいだろうと考えて、トロピカルジュースをチョイスした。


「マンゴーだ! おいしい!」


 グラスに入ったジュースをひと口飲むなり、彼女の顔が満面の笑みに変わる。
 冬璃はマンゴーに目がない。それを知っている俺は、今も迷わずそれを選んだ。


「ねぇ、見て? 夕日が綺麗だよ」

「そうだな」


 沈みゆく太陽を指さす冬璃自身がオレンジ色に染められている。
 たしかに夕焼け空も素晴らしいけれど、俺の目にはそれと同じくらい冬璃は綺麗に映っている。

 夕日と冬璃を交互に眺め、これが世に言う“なにげない幸せ”なのだと実感した。

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