怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 冬璃は昔からカミナリが嫌いだ。
 すっかり忘れていたけれど、今の彼女の奇妙な行動で、そうだったと思い出した。

 ゴロゴロとカミナリ特有の音が聞こえた途端、冬璃は両手で耳を押さえて不安そうに縮こまる。
 俺からすればカミナリのなにが怖いのかさっぱりわからない。建物の中にいれば安全なのに。
 だけどそんな冬璃もたまらなくかわいい。
 

「わ、私、もう寝るね!」


 本当は怖いのに、それを言わないところがまた俺の庇護欲(ひごよく)をかきたてる。

 頭の上まで布団をかぶって寝ている冬璃のそばへ行き、俺もベッドに入って横になった。
 照明を暗くして、冬璃の首元に右手を伸ばす。


「こっちに来いよ」

「……え?」

「いいから」


 半ば強引に冬璃の体を引き寄せ、腕枕をした状態で俺の胸に閉じ込めた。


「これで怖くないだろ?」


 俺にしがみついたまま安心して眠ればいい。
 ……まぁ、俺はその分大変だ。欲情しないと言えばウソになる。

 この状況で抱かないのは意気地なしだろうか。
 そう思う自分もいるが、どさくさに紛れて無理やり肌を重ねるのは俺の流儀に反する。

 いつの間にかカミナリは鳴りやみ、俺たちは朝まで抱き合って眠った。

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