怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
 あれこれ考えていたら、束縒が部屋に戻ってきた。


「これ、ごめんな」


 束縒はソファーに腰をおろすなり、諸角さんが渡した栄養ドリンクに触れつつ謝った。
 私はわけがわからず、小首をかしげる。


「なにが?」

「諸角がマウントを取る感じに見えたから。冬璃を嫌な気分にさせたかもって……」


 なんだそんなことか、とホッとして笑みをこぼす。束縒は気を回しすぎなのだ。


「大丈夫。せっかくだから飲んで? 私も心配だし」

「じゃあ、遠慮なく」


 バツ悪そうに笑いつつ、束縒は栄養ドリンクの蓋を開けて中身を一気に飲み干した。


「今晩、肉じゃが作るから。一緒に食べよ?」

「でも俺、帰りは遅くなる」

「今日くらい早く帰ってきてよ。お願いだから……。束縒が倒れるのは嫌なの」


 普通に伝えてもダメだ。
 懇願するように真剣に言葉を紡げば、束縒は私の気持ちを汲み取って渋々うなずいてくれた。

 諸角さんの言う“栄養があって口当たりの良い食事”が肉じゃがでいいのかはわからない。
 だけど、温かくて家庭的で、愛情のこもったものを作りたいと思ったのだ。

 ――― 束縒のために。

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