怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
「なんでよ」

「どうせ高いから。冬璃を驚かせたくない」

「子どもみたいなこと言わないの! ほら!」


 肩まで掛けていた布団をめくり、束縒が着ている長袖Tシャツの首元から脇にかけて体温計を挟もうと手を伸ばす。
 すると束縒はくすぐったいとばかりに笑いながら身をよじった。


「わかった、自分で計るから。その代わりビックリするなよ?」


 おそらく病院で計ったときにはすでに高熱が出ていたのだろう。
 だから今も、そのときと大差がないと彼は自分で予想できているのだ。

 なんとなく声もおかしい。
 咳はしていないけれど、喉は腫れているのかもしれない。

 十五秒後、ピピピと電子音が鳴る。
 体温計に表示された数字は、“38.0”だった。


「こんなに高かったら、頭がフラフラするでしょ」

「……全然平気」

「強がらないで?」


 こちらはいたって真剣なのに、束縒はなにがおかしいのかクスクスと笑っていた。

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