怜悧なCEOの恋情が溢れて、愛に囲われる政略結婚【マカロン文庫溺甘シリーズ2023】
『冬璃さん、久しぶり。元気? 一度会って話したい』


 メールを開く前と同じように、その文章を読んだあとも大きな溜め息が出た。
 もう会えないと言うだけ言って一方的に関係を切ったのは彼のほうだ。
 いったいなにを話すというのか。私は顔を合わせたくもない。
 会ったところで建設的な会話ができるとも思えないから。

 むずかしい顔をして思案しているところへコンコンコンとドアをノックする音が聞こえ、「どうぞ」と声をかければ九住さんが部屋に入ってきた。


「社長、そろそろ会議の時間です」


 意味不明なメールひとつで動揺するのはやめよう。今は仕事に集中するべきだ。
 私は目の前のノートパソコンを閉じ、そのまま会議室へ向かった。

 
 その後、メールのことを忘れていたわけではないけれど、私は返事をしなかった。
 だが、それから三日が経ったある日の朝、ネットニュースの中で彼の名を見つけた。

 “友永 奈緒、野島 憲一朗氏と婚約解消か?!”

 そんなセンセーショナルなタイトルに、ネット民は湧いていた。
 ポータルサイトの検索キーワードでもふたりの名前が上位を独占している。

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