夜が明けたら君に幸せを。
「もしもうまくいかなくてまた泣いてしまいそうな時は、俺のこと呼んで。明日香がどこにいたって必ず見つけるから」


「…うん。ありがとう」



朝陽に手を振って扉を閉める。



もしお母さんとちゃんと向き合うことができたら、修学旅行の日に朝陽に告白しよう。


今よりも強い私なら、朝陽に自信を持って言える気がした。





リビングにそっと入ると、お母さんは何かを見ながら座っていた。



「…お母さん、聞いてほしいことがあるの」



手元から目を離さないお母さんの前に立ち、はっと息を呑む。


お母さんが見ていたのはまだ幸せだった頃の三人が写っている家族写真だった。



「…私ね、中学の頃に親友だと思っていた友達に裏切られたことがあるの。そのすぐあとに大好きだったお父さんも出て行った。それから私はもう誰かを信じて生きるのはやめようって思ったの。もう裏切られて傷つきたくなかったから。大切な人を失うと、心にぽっかり穴が開くようなあんなに苦しい思いをもう二度としたくなかったから」



声が震える。


こんなこと言ったってお母さんに何も響かなかったらどうしよう。



「だけど、自分から望んだことなのに一人ぼっちで過ごす毎日はもっとずっと苦しくて、寂しかった。死にたいって何度も思ったよ」
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