夜が明けたら君に幸せを。
「なんのこと…?違う…。私はそんなことしてない!ねえ、咲那、どういうこと?」



咲那の肩を掴むと、思わず手を離してしまったほど咲那は冷たい目で私を見た。



「ねえ!この窓に引っ掛かってるの、咲那の上履きじゃない?ほら、中須って書いてあるし!しかも、これひどい…。ボロボロだし油性ペンで悪口書かれて…」



咲那の周りにいた女子たちはもちろん、少し遠くから見ていた男子までもが興味本位に窓側の方に流れていった。



「昨日、悠真くんと一緒に帰ったんだ。明日香が二人きりにしてくれたおかげで、ちゃんと家まで送ってくれた」


「え…?」



窓側で騒いでいる女子たちを頬杖をつきながら見つめたまま、咲那が話し始めた。



「途中までは、すごく楽しかった。悠真くんと二人で帰るなんて初めてだし、緊張したけど、それも全部楽しかった。幸せだなって思った。二人きりにしてくれた明日香には感謝しなきゃなって。…でもね、悠真くんが言ってきたんだ」



咲那が私を見上げ、にっこりと微笑んだ。



「明日香って、好きな人とかいるの?って。その時、全部わかっちゃった。でもまだ認めたくなくて、聞いてみたんだ。悠真くんってもしかして、明日香のこと好きなの?って。そしたら悠真くん、見たこともないくらい真っ赤な顔してたんだー。サッカーの試合誘って来たのも、私が来れば明日香も来るからだったんだよ。つまり私はただのおまけ。ただの明日香の友達」


「何…それ。もしかしてそれで私が大倉くんに色目をつかったって思ってるの?私はそんなことしてないよ!咲那のこと本当に応援してて…」


「そんなの知ってるよ。明日香が私のこと裏切るわけないじゃん」
< 49 / 117 >

この作品をシェア

pagetop