夜が明けたら君に幸せを。

一歩踏み出す夜

時は穏やかに流れていき、あっという間に七月中旬になった。


柏木さんとはたまにお昼を一緒に食べたり、話したりと、微妙な関係のまま過ごしていた。



友達になりたいと言われてから、まだはっきりとした返事は出せていない。


このまま夏休みを迎えてしまうのはなんとか避けたい…。



「あの、柏木さん…」


「ん?」


「えっと…ううん、なんでもない」



今日も言いたい言葉は呑み込んで、一緒に帰らないかという柏木さんの誘いも断って一人で帰る。



「朝陽くーん!もー、一緒に帰ろって言ったのに、萌を置いてどこ行ったんだろう…」



廊下を歩いていると、よく汐江くんにくっついているツインテールの女の子が前から駆けてきて、目が合う。



「あ、ねえねえ。たしかあなた、朝陽くんと同じクラスの子だよね?朝陽くんどこ行ったか知らない?」


「…知らない」



汐江くんとは空き教室の掃除をみんなでしてから、まだ一度も話していない。



席替えをして席が離れたこともあるし、そもそも住む世界の違う人だから。


女子とばかりいる汐江くんなんか、私も話したくないし。
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