夜が明けたら君に幸せを。
いつまで経っても返事の出せない私に、それでも毎日笑いかけてくれるから。



「…なんてね。冷たい言い方してごめんね。でも、花音と仲良くしたいって本当は思ってるのに、いつまで経っても言わない如月さんにちょっとイライラしちゃってね。それに如月さんに拒絶されたあの日、傷ついたからそのお返し的な?」


「…いや、全部本当のことだから。…ごめんなさい、冷たくして」



汐江くんはいつだって私の心を見透かしていた。


隠していた本音を引き出して、今だってわざときつい言い方をして、背中を押してくれている。



優しくて温かい人だってことを、本当はわかっている。



「花音、たしか今日日直だったからまだ教室にいると思うよ」



ぎゅっと鞄を持つ手に力を込めて、踵を返す。


もう、自分の本当の気持ちから逃げるのはやめよう。ちゃんと、向き合うんだ。



「汐江くん。ありがとう」



教室に行く前に、振り返ってお礼を言うと、汐江くんは笑顔で手を振ってくれた。



「…柏木さん」



教室には日誌を書いている柏木さんだけしか残っていなかった。


顔を上げた柏木さんは驚いたように目を丸くして、こちらに駆け寄ってきてくれた。
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