夜が明けたら君に幸せを。
「どうしたの、如月さん?」


「あ…えっと…」



覚悟を決めてきたはずなのに、いざ柏木さんを目の前にするとうまく言葉が出てこなかった。



「ゆっくりでいいよ」



何かを察したのか、私の震える手をそっと取ってくれた柏木さんが、にこっと微笑んだ。


その笑顔を見ているうちに、自然と心が落ち着いていった。



「…ずっと、自分の気持ちに嘘をついてたの。人と関わりたくないって言い聞かせて、でも本当はもう一度誰かを信じてみたかった。他愛ないことを話したり、放課後はどこか寄り道をしたり、そんな何気ない日常を友達ともう一度過ごしてみたい…。そんな日常を送るなら、柏木さんとがいいなって思ったの。ずっと逃げててごめんなさい。私と、友達になってくれませんか…?」



柏木さんは急に両目から大粒の涙を流したかと思うと、勢いよく抱きついてきた。



「え、か、柏木さん…?」


「よ、よかった…っ。私、本当はずっと不安だったんだ。如月さんは前みたいに冷たくはなくなったけど、本当はどう思ってるんだろうって。聞きたかったけど、傷つきたくなくて目を逸らして笑って。でも、そう思ってくれてたならよかった…っ」


「ご、ごめん…。私がいつまで経っても逃げてばかりだったから…」


「ううん、もういいの。…てか、なんか私たち告白し合ってるみたいだね」



涙でぐちゃぐちゃのまま柏木さんが目を細めて笑った。


その笑顔に釣られて、この世界に来てから初めて私も心から笑う。
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