夜が明けたら君に幸せを。
櫻井くんの言う通り、花音に挨拶をしたかったからもそうだし、あと…。



「爽也。英語のノート貸してー。訳すんの忘れてた」



登校してきた汐江くんと目が合い、どくっと心臓が小さく跳ねる。



「…あの。汐江くん、おはよう」



今までだったら迷わず無視していたけど、もう人と関わりたくないわけではないから勇気を出して挨拶をしてみる。


最近話せていなかったけど、汐江くんが前にしてくれたように私も返せていけたらいい。



「おはよー、如月さん」



微笑んだ汐江くんに、なぜかどきりとする。


こんな気持ち、今まで一度もなかったのに…。



「朝陽ーこっち来てぇー」


「んー?」



女子に呼ばれて行ってしまった汐江くんを、無意識に目で追いかけてしまう。


女子から人気なのは前からなのに、どうしてこんなに胸が痛いんだろう…。


どうして、苦しくなるんだろう…。





「…聞いてる?明日香」
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