夜が明けたら君に幸せを。
「え?」



ボーとしていて、前の席に座る花音が心配そうに私を見ていたことにやっと気づく。



「桐生くん。今日休みだけど、どうしたの?って」


「え、あ、玲音?そういえば来てないよね。私も聞いてないからわかんないけど…」



昨日玲音には、柏木さんに自分の気持ちをちゃんと伝えることができたとLINEで伝えた。


その時はよかったねと言ってくれて、特にいつもと変わった様子はなかったけど…。風邪かな…?



「…あ!」



思わず大きな声を出してしまってから、ハッとして慌てて俯く。



「びっくりした…。どうしたの?」


「あ、ううん、なんでもない…」



自分のことでいっぱいで忘れてしまっていた。


この時期は玲音のお父さんの精神状態が悪化して大変な時だった。



学校に来なくなったほど玲音は大変だったのに、後から知った私は何もしてあげられなかった。


前の世界でも、この世界でも、いつだって玲音は私の隣にいてくれてたのに。
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