夜が明けたら君に幸せを。
誰かに言葉を遮られ、その声に驚いて思わず手も離してしまう。



「あれ、萌。来てたの?」



汐江くんに後ろから抱きついたのは、いつものツインテールの女の子だった。


今日はツインテールをツインお団子にしていて、蝶々の可愛い浴衣も着ている。



「朝陽くん浴衣かっこいいー!ねえ、萌の浴衣可愛いー?新しく買ったんだよー!」


「ああ、うん可愛いね」



きっと汐江くんにとっては何気ない一言なんだろうけど、私の胸はちくっと痛んだ。



「ねえ朝陽くん来てるって知ったらみんな喜ぶよ!あっちにクラスの子達数人いるから、行こー!」


「え、あでも俺…」


「行ってきていいよ。花音たちには私から伝えとくから」


「え?…じゃあちょっとだけ顔出してくるね」



ごめん、と謝ってきた汐江くんになるべく笑顔を意識して手を振る。



…仕方ない。汐江くんが人気者なことくらい初めから知ってたんだし。


何を今更少し複雑な気持ちになっているんだろう…。



「…あ、みんな…」



汐江くんが抜けたこと言わなきゃと前を向くと、そこに三人の姿はなかった。
< 80 / 117 >

この作品をシェア

pagetop